【いつ・いくら返す?】繰り上げ返済シミュレーションで見える、本当に賢い返し方とは?
2026.07.02
こんにちは。高槻市の工務店、woodplus代表の武下良太です。
2026年6月15日に、フラット35の金利上昇についてお伝えしましたが、今回はその続きとして「繰り上げ返済」をテーマにお話しします。
「金利が上がったから、繰り上げ返済でなんとかしたい」というお声を、最近よくいただきます。ただ、繰り上げ返済は、ただ早く返せば良いというものではありません。タイミングや金額、住宅ローン控除との関係まで踏まえて考える必要があります。
今回は、フラット35を例に、繰り上げ返済の具体的なシミュレーションと、判断時に押さえておきたいポイントを整理してお伝えします。前回の金利動向の記事とあわせてお読みいただくと、より理解が深まります。
■前回の記事は以下からご覧ください
【3%台に突入?】フラット35が急上昇している今、それでも今家を建てるべき理由とは?

繰り上げ返済とは?まず知っておきたい基本のしくみ
繰り上げ返済とは、毎月の返済とは別に、まとまった資金を元金に充てて返済することです。元金が減ることで、その分にかかるはずだった利息が軽減されます。方法は大きく「期間短縮型」と「返済額軽減型」の2種類があり、それぞれ向いているご家庭の状況が異なります。
▶ 期間短縮型と返済額軽減型、何が違う?
「期間短縮型」は、毎月の返済額を変えずに、返済期間そのものを前倒しで短くする方法です。利息軽減効果が大きく、定年までに完済したい方や、できるだけ総支払額を抑えたい方に向いています。
「返済額軽減型」は、返済期間は変えずに、月々の返済額を下げる方法です。繰り上げ返済をした直後から家計の負担を軽くできるため、教育費が増える時期や、収入の変化に備えたい時期に効果を感じやすい方法です。

同じ金額を繰り上げ返済した場合、総利息の軽減額は期間短縮型の方が大きくなる傾向があります。たとえば同じ100万円を繰り上げ返済しても、期間短縮型は「将来の利息」を丸ごと圧縮する効果があるのに対し、返済額軽減型は「今の負担」を和らげる効果が中心になる、というイメージを持っていただくと選びやすくなります。将来に向けてできるだけ利息を抑えたい方は期間短縮型、今の家計にゆとりを持たせたい方は返済額軽減型を検討するとよいでしょう。
▶ フラット35の繰り上げ返済の条件と手数料
フラット35(買取型)では、繰り上げ返済の手数料は基本的にかかりません。ただし、金融機関の窓口で手続きする場合、繰り上げ返済できる金額は100万円以上という条件があります。
一方、住宅金融支援機構が提供するインターネットサービス「住・My Note」を利用すれば、10万円以上から繰り上げ返済が可能です。いずれの方法でも、繰り上げ返済を希望する日の1か月前までに、返済中の金融機関へ申し出る必要があります。
また、直前の返済日から繰り上げ返済日までの間に発生する利息(経過利息)を、別途お支払いいただく場合があります。事前に確認しておくと安心です。

なお、フラット35には「買取型」のほかに「保証型」という商品もあり、保証型では固定金利期間中に全額繰り上げ返済をする際に、3万3千円程度の手数料がかかる場合があります。ご自身が契約している商品タイプによって条件が異なりますので、事前に確認しておくと安心です。
民間銀行の住宅ローンの中には1円単位で繰り上げ返済できる商品もあり、フラット35は最低金額が決まっている点を事前に押さえておくとよいでしょう。少額をこまめに繰り上げ返済したい方は、ご自身が利用している金融機関の条件を確認しておくことをお勧めします。
シミュレーションで見る、繰り上げ返済の効果
繰り上げ返済の効果は、「いつ」「いくら」行うかによって大きく変わります。一般的に、借入から早い時期に、まとまった金額を返済するほど、利息軽減効果は大きくなります。
いつ・いくら返すかで利息軽減効果は変わる
利息は元金残高に対して発生するため、元金が多く残っている返済初期に繰り上げ返済を行うほど、軽減できる利息は大きくなります。具体的に見てみましょう。たとえば借入3,000万円・金利1.5%・35年返済というケースで、200万円を繰り上げ返済する場合、返済開始から10年後に行うと軽減できる利息は約85万円、20年後に行うと約46万円という試算例があります。同じ金額の繰り上げ返済でも、タイミングが早いほど効果は大きくなる傾向があると言えます。

逆に言えば、「いつか余裕ができたら」と先延ばしにするほど、その効果は小さくなりやすいということでもあります。お子さまの誕生や住宅取得のタイミングと合わせて、繰り上げ返済の計画を早めに描いておくことをお勧めします。
▶ 具体的な試算例(フラット35・3%台のケース)
前回の記事でお伝えした通り、2026年6月のフラット35金利は3.21%でした。仮に5,000万円を3.21%・35年で借り入れた場合、毎月の返済額は元利均等返済で約19.8万円になります(概算値)。この条件で、5年後に100万円を期間短縮型で繰り上げ返済すると、返済期間がおよそ1年短縮され、総支払利息を250万円以上削減できる可能性があります(試算値。実際の効果は借入条件やタイミング、金利によって異なります)。

同じ100万円を返済額軽減型に充てた場合は、完済時期は変わらないものの、その時点から月々の返済額を下げる効果が得られます。一方で、教育費がかさむ時期や収入に変動があった時期には、返済額軽減型を選ぶご家庭も少なくありません。
なお、現在のような金利上昇局面では、固定金利のフラット35を利用している場合、変動金利のように返済額が上がる心配はありませんが、それでも「借りている金利が3%台である」という事実は変わりません。早めの繰り上げ返済は、金利上昇局面においても家計を守る有効な選択肢のひとつになり得ます。ただし、どちらが適しているかはご家庭の優先順位によって異なりますので、実際の数値は金融機関のシミュレーションでご確認いただくことをお勧めします。
繰り上げ返済で注意したい3つのポイント
繰り上げ返済は利息軽減につながる一方で、注意すべき点もあります。住宅ローン控除との関係、手元資金の確保、金利タイプによる考え方の違いという3点を押さえておくと、判断のミスを防ぎやすくなります。
① 住宅ローン控除との兼ね合いを確認する
住宅ローン控除とは、毎年の年末時点の借入残高のおおむね0.7%相当が、所得税などから差し引かれる制度です。借入残高が大きいほど、控除額も大きくなります。
つまり、繰り上げ返済で残高を減らすと、その年以降の控除額が小さくなる場合があります。
さらに、繰り上げ返済の結果、返済期間が10年未満になると、住宅ローン控除そのものの対象外になる点にも注意が必要です。特に期間短縮型を選ぶ場合は、繰り上げ返済後の残りの返済期間が10年を下回らないか、事前に確認しておくことが大切です。

実際のご相談でも、「控除期間中だから繰り上げ返済はしない方がいいのか」と迷われる方がいらっしゃいます。控除による還付額と、繰り上げ返済による利息軽減額を比べると、借入残高や金利水準によって、どちらが有利かは変わります。どちらが正解かは、ご家庭の状況次第です。控除を受けられる残り年数と、繰り上げ返済による軽減効果の両方を並べて比較したうえで、判断することをお勧めします。
② 手元資金を減らしすぎない
繰り上げ返済に資金を充てすぎると、急な出費や収入の変化に対応できなくなるおそれがあります。一般的には、生活費の半年から1年分程度を目安に、手元の予備資金を確保したうえで繰り上げ返済を検討することが望ましいとされています。教育費や車の買い替え、家電の故障など、将来予定されている支出や突発的な出費がある場合は、それらを差し引いた金額で繰り上げ返済の計画を立てることをお勧めします。

「貯まった分を全部繰り上げ返済に回したい」というお気持ちはよく分かりますが、手元資金がゼロに近づくと、思わぬ出費の際にカードローンなど金利の高い借入に頼らざるを得なくなることもあります。繰り上げ返済はあくまで、生活の安心を確保したうえで検討するものとお考えください。
③ 金利タイプによって考え方が変わる
フラット35のような全期間固定金利の場合、返済額は契約時点で確定しているため、繰り上げ返済の効果は純粋に利息軽減として現れます。
一方、変動金利型を利用している場合は、今後の金利上昇リスクに備える目的で、返済額軽減型の繰り上げ返済を選ぶという考え方もあります。変動金利は現在低水準ですが、今後上昇していく可能性も指摘されていますので、金利が上がった際に返済額が急に増えることを避けたい方には、返済額軽減型が選択肢になり得ます。

ご自身が選んでいる金利タイプによって、繰り上げ返済の意味合いが変わってくる点も意識しておくとよいでしょう。
我が家に合った繰り上げ返済の進め方
繰り上げ返済は、貯まったらまとめて行うよりも、計画的に積み立てながら検討する方が、無理なく続けやすい傾向があります。
▶ ボーナス活用と毎月積立、それぞれの考え方
ボーナス時にまとまった金額を繰り上げ返済に充てる方法は、家計管理がしやすい一方、ボーナスが減額された年には計画が崩れやすいという面もあります。毎月少しずつ積み立てて、一定額が貯まった時点で繰り上げ返済を行う方法であれば、急な収入変動の影響を受けにくくなります。どちらが向いているかは、収入の波や家計の管理スタイルによって異なりますので、ご自身の働き方や収入の安定性に合わせて選ぶとよいでしょう。

住宅ローンの相談の現場でも、「ボーナス返済を併用しているご家庭」と「毎月の返済のみのご家庭」とでは、繰り上げ返済の組み立て方が変わってくる印象があります。あらかじめ、どちらの方法で資金を準備するかを決めておくと、判断に迷いにくくなります。
▶ 迷ったら早めに専門家へ相談を
繰り上げ返済は、一度実行すると元に戻すことができません。金額やタイミングに迷う場合は、住宅ローンを契約している金融機関や、資金計画に詳しい住宅会社へ事前に相談することをお勧めしまず。
woodplusでも、資金計画のご相談の中で、繰り上げ返済のシミュレーションを一緒に確認させていただくことが可能です。「いつ、いくら繰り上げ返済すれば、控除や利息のバランスが取れるのか」という具体的な数字は、ご家庭ごとに異なります。漠然とした不安のまま判断するのではなく、数字で整理したうえで決めていただくことを大切にしています。

本記事のまとめ
今回お伝えした内容を整理します。
• 繰り上げ返済には「期間短縮型」と「返済額軽減型」があり、目的によって選び方が異なります。
• フラット35(買取型)の繰り上げ返済手数料は無料ですが、窓口は100万円以上、ネットは10万円以上という最低金額があります。保証型など一部商品では手数料がかかる場合があります。
• 繰り上げ返済は早い時期ほど利息軽減効果が大きくなる傾向があります。
• 住宅ローン控除との兼ね合いや、手元資金の確保など、事前に確認しておきたい注意点もあります。
• ご自身の金利タイプや家計の状況に合わせて、無理のない計画を立てることが大切です。
繰り上げ返済は、正しく使えば家計の安心材料になります。一方で、タイミングや金額を誤ると、手元資金が不足してしまうこともあります。迷ったときは、まず資金計画を整理するところから始めてみてください。
※本記事は2026年6月末執筆時点の情報をもとにしています。金利・制度・税制などの内容は変更される場合があります。最新情報は各金融機関・住宅金融支援機構の公式サイトをご確認ください。
引用元・参照元
・住宅金融支援機構「繰上返済|【フラット35】」
https://www.flat35.com/user/kuriage_hensai.html
・住宅金融支援機構「住・My Noteでできること|【フラット35】」
https://www.flat35.com/user/su-my-note/index.html
・住宅金融支援機構「繰上返済を行うことはできますか。」 https://jhffaq.jp/jhffaq/flat35/web/knowledge298.html
・住宅金融支援機構「最新の金利情報:長期固定住宅ローン【フラット35】」https://www.simulation.jhf.go.jp/flat35/kinri/index.php/rates/top
・住信SBIネット銀行「〔フラット35〕繰上返済の手数料はかかりますか?」https://help.netbk.co.jp/faq_detail.html?id=4060
・モゲチェック「フラット35を繰り上げ返済するタイミングは?手続きと条件も確認」https://mogecheck.jp/articles/show/bB5wrxOVq0PGqYa0kQAg
・モゲチェック「フラット35の繰り上げ返済の方法は?住宅ローン控除との関係も整理」https://mogecheck.jp/articles/show/ArKz81lk4DAOE97oeQJV
・イオン銀行 タマルWeb「【2026年最新版】住宅ローン控除(減税)でいくら戻ってくるの?」https://www.aeonbank.co.jp/column/mortgageloan/koujo/seido/
・日本経済新聞「フラット35、6月の最低金利3.21% 現行制度で初の3%超え」https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA012N40R00C26A6000000/
よくある質問<FAQ>
Q1. 繰り上げ返済は最低いくらから可能ですか?
A. フラット35(買取型)の場合、金融機関窓口での手続きでは100万円以上、住宅金融支援機構の「住・My Note」を利用したネット手続きでは10万円以上から可能です。民間銀行の住宅ローンでは1円単位で対応している商品もありますので、ご自身が利用している金融機関の条件をご確認ください。
Q2. 期間短縮型と返済額軽減型、どちらが得ですか?
A. 一般的には、同じ金額を繰り上げ返済した場合、期間短縮型の方が総利息軽減額は大きくなる傾向があります。ただし、月々の負担を早めに減らしたい場合は返済額軽減型が適していることもあり、一概にどちらが得とは言い切れません。ご家庭の状況に合わせて選ぶことが大切です。
Q3. 繰り上げ返済をすると住宅ローン控除はどうなりますか?
A. 繰り上げ返済によって年末時点のローン残高が減るため、控除額も小さくなる場合があります。また、繰り上げ返済の結果、返済期間が10年未満になると、住宅ローン控除の対象外になりますので注意が必要です。控除額の減少と利息軽減効果のバランスは、個別の状況によって異なりますので、事前にシミュレーションで確認することをお勧めします。
Q4. 手元の貯金がまだ少ない場合、繰り上げ返済は控えるべきですか?
A. 一般的には、生活費の半年〜1年分程度の予備資金を確保したうえで繰り上げ返済を検討することが望ましいとされています。急な出費や収入減少に備える資金が不足した状態での繰り上げ返済は、かえって家計を不安定にする可能性がありますので、優先順位を考えて計画することをお勧めします。
Q5. 繰り上げ返済はいつ申し込めばよいですか?
A. フラット35の場合、繰り上げ返済を希望する日の1か月前までに、返済中の金融機関へ申し出る必要があります。タイミングを逃さないよう、検討段階から早めに金融機関へ相談しておくと安心です。
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